次世代のB2Bマーケティングフレームワーク「SAVE」とは?4Pとどう異なる?

Web制作をしていると、クライアントの企業、製品・サービスに対して、マーケティングや経営戦略のフレームワークを利用することがあります。

「4P」「4C」といった手法を用いて、企業や製品・サービスを分析していきます。

そんな中でも「現代版4P」と呼ばれている「SAVE」という分析手法を見つけました。

そんな「SAVE」について徹底調査してみました。

目次

「SAVE」とは?

「SAVE」とは、4Pや4Cを現代の製品・サービスに合わせた形で分析する手法です。

  • Solution(課題解決)
  • Access(接点、接触)
  • Value(価値)
  • Education(教育、啓蒙)

それぞれの頭文字をとってその名前がつけられました。

それぞれにどんな意味があるのでしょうか?その意味とちょっとした例を出してみましょう。

Solution(課題解決)

顧客の課題を解決できるような製品・サービスであるか。

例)日常のちょっとした不便を解決

Access(接点、接触)

顧客行動プロセス(AIDMA / AISAS)のうち、顧客との接点はどこか?

例)Web上での広告やコミュニティやイベント、公式LINEのマガジン

Value(価値)

製品・サービスを選択してもらえるような価値はどこにあるのか。

費用対効果が高い(課題解決 > 費用)と価値を見出してくれる

例)多少値は張るが、他にはないサービスを提供

Education(教育、啓蒙)

自社の理念、製品・サービスを理解してもらうためにどのような情報提供をするのか。

例)セミナー、Webメディアでの発信

これらのように、自社視点である4Pと顧客視点である4Cを混ぜ合わせたような分析手法が「SAVE」なのです。

マーケティングミックス「4P」との違い

そもそも、SAVEとの比較対象にされている「4P」について押さえておきましょう。

4Pとは何か、それを拡張した「7P」 についても少し触れておきます。

そもそも「4P」とは?

「4P」とは、1960年代にマッカーシーが提唱したマーケティングフレームワークで別名「マーケティングミックス」と呼ばれています。

商品やサービスを4つの視点(P)から自社視点で分析して戦略を立てていきます。

  • Product: 商品
  • Price: 価格
  • Place: 流通
  • Promotion: 広告

さらに3つ追加された「7P」も存在する

コトラーによると4Pは製品だけを対象とするものでサービスは対象にはなっていませんでした。

無形のサービスが増加し、4Pでは足りないくらい複雑になっています。

4Pに加え、

  • People:人
  • Process:販売プロセス
  • Physical Evidence:物的証拠

といった3つの要素を追加し、サービスでもマーケティングミックスのフレームワークで戦略を立てられるようになりました。

新しいフレームワークの先駆者は「モトローラ・ソリューションズ」。SAVEを成功に導くための「3つの要件」とは。

ハーバードビジネスレビューの記事『Rethinking the 4 P’s』によると、

新しいフレームワークの先駆者であるモトローラ・ソリューションズは、政府機関や企業におけるマーケティング組織の再編と市場参入戦略の指針として、SAVEを活用しました。その中で同社は、4P思考からSAVEへの転換を成功させるための3つの要件を明らかにした。

Rethinking the 4 P’sよりDeepLにて日本語翻訳

モトローラ・ソリューションズの最高マーケティング責任者であり、HBR 調査の著者の 1 人である Eduaro Conrado 氏は、BtoBビジネスの中で4Pに当てはめるのに違和感を感じていたそうです。

そして、SAVEフレームワークに目を向けるべきだとして実際にこのフレームワークを使用したマーケティング施策を行っています。

4P思考からSAVEへの転換を成功させるための3つの要件

Eduaro Conrado 氏は、「4P思考からSAVEへの転換を成功させるための3つの要件」として以下のような取り組みを行うべきだと提唱しました。

  1. 経営陣が組織全体でソリューションマインドセットを奨励すること。
  2. 経営陣は、マーケティング組織の設計が顧客中心主義を反映し、強化することを確実にする
  3. マーケティングと営業、そして開発・提供チームとのコラボレーションを実現すること

それぞれ見ていきましょう。

その1:経営陣が組織全体でソリューションマインドセットを奨励すること。

多くのB2B企業、特にエンジニアリングやテクノロジーを重視する企業では、「技術的に優れた」製品やサービスという観点で考えるのではなく、顧客中心の視点を持つことが難しいのです。

Rethinking the 4 P’sよりDeepLにて日本語翻訳

今までの4Pの考え方は、製品やサービスの技術力を売りにしており、組織全体でその技術力を打ち出すようなマーケティングを行っていました。

しかし、顧客が求めているものはオーバースペックな技術力ではなく、使いやすさや利用体験(User Experience)、課題解決をしてくれるかどうかです。

その2:経営陣は、マーケティング組織の設計が顧客中心主義を反映し、強化することを確実にする

モトローラ・ソリューションズでは、マーケティング機能を補完的な専門分野に大幅に再編成することで、SAVEフレームワークの各要素に焦点を当て、顧客の購買ジャーニーとの整合性を図ることが可能になりました。

Rethinking the 4 P’sよりDeepLにて日本語翻訳

「SAVE」の基本は「顧客中心」です。

マーケティング専門の組織は、顧客の行動について理解している組織です。

いくら技術があっても顧客の行動プロセスに目を向ける人がいなければ、売れるものも売れないのです。

その3:マーケティングと営業、そして開発・提供チームとのコラボレーションを実現すること

モトローラ・ソリューションズは、専門チームがソリューションに集中し、特定の顧客ニーズへのアプローチを調整することを求めました。これにより、機能的な境界線が会社のソリューションを決定することがないようにしました。

Rethinking the 4 P’sよりDeepLにて日本語翻訳

組織が大きくなるにつれて問題になるのが、「縦割り組織」です。

機能によって部署を分けることで分業を可能にしている反面、各部署・部門間での決定事項や認識が異なることがあり、全社的な方向性が担保されないことがあります。

マーケティングや営業チームが顧客のニーズを拾い上げ、これらを開発・提供チームが製品・サービスに反映していくといったコラボレーションにより、SAVEの実現することができます。

このようにモトローラ・ソリューションズではSAVE分析を実施するにあたって組織のあり方を見直すことを重要視していました。

まとめ

「SAVE」について、なんとなくご理解いただけましたでしょうか?

現在の製品やサービスは今までのフレームワークでは対応しきれないほど多様化してきました。

SAVEのような新しいフレームワークがマーケティングの専門家の間で新常識となっていくことが楽しみです。